たとえば、食料・衣料・台所用品・浴室用品・清掃用品などを、生活保護受給者に現物支給するようにしたとする。
これらの物資を全生活保護世帯の100万世帯分まとめて購入すると、強烈なボリュームディスカウントが効くので、調達コスト自体はかなり削減することができるだろう。
しかし、生活保護世帯の多くは、格安スーパーなどを利用することが多い。
20年に渡る長期経済停滞という蠱毒で生ぬるい格安スーパーはことごとく死に絶えて行く中で、傷だらけになりながらも生き残った日本の格安スーパーの経営努力とコストダウンイノベーションの蓄積はすさまじいものがある。ちょっとやそっとのボリュームディスカウントぐらいじゃとても対抗できない。
アメリカの田舎町にウォルマートがやってくると、すさまじい低価格攻勢に地元の商店街がことごとく破壊されて後にはウォルマートしかない不毛の荒れ地になってしまうと言われるが、そのウォルマートが西友を買収して以来、西友も「毎日低価格」を掲げてコストダウンイノベーションを続けている。ところが、その西友よりもさらに2~3割安いという驚異的な毎日低価格で提供する格安スーパーが勢力を広げているほどだ。たとえば、鶏の胸肉が西友では100g48円の時にその格安スーパーでは100g37円、豚肉の小間切れが西友で100g107円の時にその格安スーパーでは100g69円。本当に豚の肉なのかどうか疑いたくなるほどの値段だが、普通に美味しい。
さらに、生活保護費を現金で支給した場合、「安いとこ取り」の買い物が出来る。肉が安い格安スーパー、野菜が格安の八百屋、雑貨が格安のスーパーはそれぞれ別だが、自分の近所で一番安い店の総力を結集した安さで生活必需品を調達できるのだ。
こうしてみると、いくら100万世帯分のボリュームディスカウントが効いたところで、近所の格安スーパーよりも安い価格で生活必需品を調達できる見込みは薄いだろう。
しかも、それに加えて配送コストの問題がある。
通常の世帯に比べると、生活保護世帯は人口密度が薄く、広く分散してしまっている。
このため、格安スーパーなどよりも、流通コストがずっと高くなってしまう。
たとえば、1km圏内に1つの格安スーパーを配置したとする。
格安スーパーがその1km圏内の5000世帯の顧客に対して商品を提供できるのに対して、同じ圏内に生活保護世帯は100世帯しかない場合、1世帯あたりに換算した配送コストはずっと高くなってしまう。
このため、生活保護費を現物で支給した場合と、現金で支給した場合を比較すると、現物支給した場合の方がずっとコストが大きくなってしまう。
おそらく、生活保護予算が兆の単位で膨らんでしまうことになるだろう。
そのためにはさらなる増税が必要になるが、現金支給を現物支給に切り換えるためだけに、そんな増税を有権者が受け入れるとは、とうてい思えない。
頑張ってきた実務社員は助けるけど、
会社を滅ぼした無能なホワイトカラーは必要ないってことだろうなぁ
好きな位置で、自分に都合のいい人間だけが「仲間」になるように、線を引く。
線の外の人間は、悪であり、間違っていると思い込み、仲間内のルールで罵倒し石を投げる。
仲間内でうまくやっていくため、すべては「正しいこと」だと、確認しあう。
いずれは仲間内で監視しあい、少しでも異なる点があれば、糾弾したたき出す。
安全な娯楽。
鴻上尚史「成人するあなたへ」
本物の孤独と出会おう
成人、おめでとう。でも大人とはなんでしょう。賢いあなたは、年を重ねることと、大人になることは何の関係もないと見抜いているんじゃないですか?
あなたの周りには、二十歳をとうに過ぎているのに、少しも大人じゃない人が何人もいるはずです。
大人と子供の違いはなんでしょう。二十歳を過ぎると、実にやっかいな問題にぶつかります。解決不可能な、どちらの結論を選んでも、間違っているんじゃなかと思えるような、正しい解決策が見えない課題です。
でも、人生の問題とはそういうものです。大学入試まで、子供は「問題には必ず正解がある」と思い込まされていますが、もともと、人生の問題には、完全に正しい解答なんてありません。
そういう時、子供は、自分で考えることをやめて、親や誰かのアドバイスや言いつけに従います。そうすれば楽ですし、責任も生まれません。子供とは、いつも誰かに手を引いてもらっている存在なのです。
そして、二十歳を過ぎてもそうしている人は、絶対に孤独になりません。
成人式でお酒を飲んで暴れている若者が、毎年話題になりますが、彼らは、本当の意味で一度も孤独になったことがない人達だと思います。
孤独には、「本物の孤独」と「偽物の孤独」があります。
一週間、誰とも話さなかったから孤独なのではありません。
誰とも話さなくても、メールをやりとりし、インターネットで会話していれば、孤独ではありません。
孤独とは、「一人で自分と向き合う」ことです。例えば、あなたがすてきなアドバイスを受けたり、役に立つ本を読んだりしても、一人でかみし める時間がなければ、それはあなたのものにはなりません。今聞いた役に立つ情報を、右から左に伝えるだけでは、あなたのものになっていないのです。
二十歳を過ぎて出会う解決不可能な問題は、親に判断を任せない限り、自分で解決するしかありません。が、「偽物の孤独」しか経験していない人は、アドバイスしてくれる人を求めて、ウロウロさまようのです。
ただ、「本物の孤独」の時間が、うんうんとうなりながら問題に取り組むことができるのです。
もし「本物の孤独」を経験したいと思ったら、あなたは、携帯電話の電源を切り、パソコンやテレビから離れて、あなただけの時間を持つ必要があります。その時間が長ければ長いほど、あなたは「本物の孤独」と出会い、自分自身と会話を始められるのです。
「本物の孤独」はしんどいですが、あなたに暗闇を進んでいく勇気をくれます。終わりが明確でない暗闇を一歩一歩、歩く時、あなたは初めて大人になるのです。(作家・演出家)
こうかみ・しょうじ 1958年新居浜市生まれ。早稲田大在学中に劇団第三舞台を結成。95寝ん、「スナフキンの手紙」で岸田国士戯曲賞を受賞。現在、
「KOKAMI@network」と、「虚構の劇団」を中心に活動。
--鴻上尚史「成人するあなたへ」、『愛媛新聞』2012年1月9日(月)付。
覚え書:鴻上尚史「成人するあなたへ」、『愛媛新聞』2012年1月9日(月)付。 - Essais d’herméneutique
風呂、トイレ、散歩。




